発達障害とは
生まれつきの特性で、病気とは一線を画すのが発達障害です。脳機能の発達に伴い、それぞれの困難さが生活に発生します。原因については、はっきり解明されてはいませんが、脳機能の発達のアンバランスさにあるとされています。ひとくちに発達障害と言ってもいくつかのタイプに分類され、主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。
ただ、タイプ別に関係なく共通していることがあります。それは、生まれつき脳の一部の機能に偏りがあるという点です。一部とは、見聞きしたものを理解し、記憶する、過去の経験に照らして、計画を立て行うといった、脳の様々な機能を指します。
また同一の人に、いくつものタイプの発達障害が併存していることも少なくありません。そのため、同じ障害がある人同士でも、まったく違っているように見えることがあります。個人差が非常に大きく現れるのが、「発達障害」の特徴でもあります。
主なタイプとは
発達障害の中でも多いとされるタイプ(自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害)の特徴は次の通りです。いずれのタイプも見た目ではわかりにくいので、「本人の努力が足りない」と周囲の方々は思い誤りがちです。しかし、努力だけでは、なかなか改善が難しいことがあります。
自閉スペクトラム症(ASD)
障害の兆候が早い場合1歳を過ぎた頃から出始め、この頃から「人の目を見ることが少ない」「指さしをしない」「他の子どもに関心が無い」などの様子が見られます。対人関係に関連するこのような行動は、通常の子どもであれば健やかに伸びていくものですが、自閉症スペクトラム障害の子どもでは明確な変化がなかなか現れません。
保育所や幼稚園に入ってもひとり遊びに興じて集団行動が苦手など、人との関わり方が独特なことから気づくこともあります。
このほか、言葉を話し始めた時期に遅れが無くとも話したいことしか口にしないため、会話が成立しにくいことがあります。その一方で、自分の好きなことや興味のある対象には毎日何時間でも熱中しています。
初めてのことや、決まっていたことの変更は苦手で、そうしたことに対応するのに時間がかかることがあります。
思春期や青年期になると、自分と他者との感じ方の違いに気づいたり、対人関係がうまくいかないことに悩んだりし、不安・うつ症状を合併するケースもあります。就職して初めて、仕事を臨機応変にこなせないことや職場での対人関係などに悩み、生きづらさを感じ自ら障害ではないかと疑い、医療機関を訪れる方もいます。
成長とともに症状が目立たなくなる方や、能力の不均衡を上手に活用して、大いに活躍する方も見受けられます。
治療について
幼児期に診断された場合には、個別または小集団での療育によって、コミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばすことが可能です。また、療育を経験することによって新しい場面に対する不安が減り、集団活動への参加意欲が高まります。注意欠如・多動症(ADHD)
多動―衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が現れ、そのタイプ別の症状の程度により、「多動―衝動性優勢型」「不注意優勢型」「混合型」に分類されます。
小学生を例にとると、多動―衝動性の症状には、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊んでいられない、じっとしていられない、しゃべり過ぎる、順番を待てない、他人の会話やゲームに割り込む、などがあります。
不注意の症状には、学校の勉強でうっかりミスが多い、課題や遊びなどで集中が続かない、話しかけられても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやり遂げられない、課題や作業の段取りを組むのがへた、整理整頓が苦手、宿題のように集中力を要することを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などが挙げられます。
多動症状は、一般的には成長につれて軽くなるケースが多いのですが、不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと言われます。また、思春期以降、不安・うつ症状を合併する方も見られます。
治療について
幼児期や児童期に診断されると、多くの場合、薬物療法と行動変容の促進、および生活環境の調整などが行われます。
薬物療法としては、脳を刺激する治療薬が主に用いられます。どちらも脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあります。 生活環境の調整としては、勉強などに集中しないといけない時には、遊び道具を片づけ、テレビを消すなど、集中を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくすことが大切です。
また、集中する時間は短めに、一度にこなす量は少なめに設定し、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくのも効果的です。
学習障害
全般的な知的発達には問題はありませんが、読む・書く・計算するなど、特定の事柄のみが難しい状態を指し、それぞれ学業成績や日常生活に困難が生じます。こうした能力を要求される小学校2~4年生頃に学力不足では説明のつかない成績不振などがみられ、学習障害が明らかになることがあります。
治療について
学習障害の子どもには教育的な支援が重要になります。読むことが困難な場合は大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読んだり、書くことが難しい場合は大きな桝目のノートを使ったり、計算が困難な場合は絵を使って視覚化するなど、症状に応じたユニークな工夫が必要です。
親と学校とが子どもの抱える困難を正しく理解し、決して子どもの怠慢のせいにせずに、適切な支援策についての情報を共有することが大切です。